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なんだそれ?と立夏は大きな目を瞬きさせて草灯を見上げる。
「そう。バイバイした後に立夏が寂しくならないおまじない。
目閉じてごらん」
草灯に言われて立夏は何だろう?と思いながら、言われたとおり目を閉じる。
(何?何すんの?キス…とか?)
「目を開けちゃダメだよ」
どきどきしながら立夏は「うん」と答えて目を閉じて待つ。
(目開けたらいないとかよせよ!?)
そっと指先が頬に触れて立夏はぴくっとミミを動かす。
そのまま顔が近づいてくるのがかかる吐息でわかった。
キスのどこが「寂しくならないおまじない」なのだろうか?
正直に言えばそんなことされたら、余計に離れたくなくなる。
ゆっくりと唇が重なり、こんな住宅街で誰かに見られてないだろうかと思う。
ただ、唇を重ねるだけの短いキスに、これだけ?と立夏が思っていると首筋にキスされる。
「っ……」
きつく肌を吸われてちりっとした痛みを感じる。
「……今のが、おまじない…?」
唇が離れて目を開けると立夏は痛みを感じたキスされた場所を手で押さえる。
「そう。しばらくはアトが残るから寂しくないでしょ?」
にこっと笑う草灯に立夏は肩から力が抜ける。
(そーゆーモンダイ?)
「一緒にいなくても、寂しくなったら思い出して」
「…それって、解決になんない気が…」
「そうかな」
「そうだよ。こんなことしたら……」
頬を少し赤くしてブツブツと文句を言う立夏に草灯は笑って言う。
「余計寂しくなる?」
「………」
図星のようで立夏はムッとした表情をしている。
「寂しくなったら電話して」
「やだ」
ふいっとそっぽを向いてしまう立夏に、草灯は苦笑する。
「なんで?寂しいって言えば会いに来るよ。いつでも」
それは嘘じゃなく、本当にそうしたいと草灯は思う。
立夏が寂しいと言えば、どんなことを押してでも会いに来るのに。
「その前に来いよ」
「………」
唇を尖らせてぼそぼそと言う立夏に草灯は面食らってしまう。
「オレのこと、寂しくさせる気かよ」
立夏は不機嫌そうな顔をしているが、ミミを伏せて頬を赤くしてそんなことを言う。
(まいったなぁ…)
草灯はくくっと笑いを堪えて肩を揺らす。
「立夏がバイバイする時寂しいのはどうしたらいい?」
「そんなのわかってたら何とかしてるよ」
むすっとしている立夏が可愛くて仕方ない。
「門限だから、帰る。おまえも早く帰れよ」
いくら別れを惜しんでも、離れたくなくても門限には逆らえない。
仕方なくぶっきらぼうに言うと立夏は背中を向けて家に帰ろうとする。
「立夏」
草灯は立夏の細い腕を掴んで引き止める。
「なに?」

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