relation
「どうかした?」
視線に気付いて聞くとぴくりと立夏のミミが動く。
「手、大きいなと思って。指長いな」
テーブルを挟んだ向かいから立夏は草灯の手を取って、手の平を合わせる。
子供の立夏の手と比べ、大人の草灯の手は立夏より軽くひとまわり大きい。
「立夏も背が伸びたら手も大きくなるよ」
にっこり笑いながら言うと草灯は手の平を合わせたまま、立夏の手を握る。
「もういいから。放して」
「ちょっとくらいいいじゃない」
「放せよっ」
「イヤ」
二人が座っているのはガラス張りのカフェの通りに面した席で、外からも中の様子がわかるので、手を握られたままはちょっと恥ずかしい。
にこにこ笑う草灯の指をはがそうとすると、フッと影が出来て立夏は窓を見る。
「……誰?」
ガラスの向こうに立ち、べったりとガラスに張り付いてこちらを見ている人物は、何やら睨むような顔をしている。
(何、この人……誰?)
「あれ、キオ?」
草灯が名前を口にするとその人物はその場を離れていなくなる。
「知ってる人…?」
「友達」
ガラスに張り付いていた人物は、周りこんで店内の草灯たちが座っているテーブルまでやって来た。
「昼間っから手なんか握って何やってんの。ヤラシーなーっ」
「やらしい?それは勘繰りってものだよ」
(やらしい!?やらしいのか?今の…手繋ぐのがやらしいのか?)
草灯と草灯の友達という人物の会話を立夏は無言で聞く。
「っと…実物に会うのは初めてだな。へえ、ホンモノは写真で見るよりかわいいじゃん」
「…コンニチハ…(知ってんのか?なんで知ってんの)」
会ったこともない知らない人だけど相手はこちらを知ってるようで、立夏は控え目に挨拶する。
「立夏のことは草ちゃんから聞いてるよ。この人、立夏立夏ってバカだよなー。
あ、オレはキオさん、よろしくな!」
明るいノリのキオと名乗る草灯の友達は、初対面でいきなり呼びすてで、ぐりぐりと頭を撫でてくる。
その馴れ馴れしい接し方に立夏は気後れして少しミミを伏せた。
こういうタイプの人間は初めてでどうしていいのか戸惑う。
「あれ?もう嫌われた?」
キオは草灯の隣に座ると、ミミを伏せている立夏を指差して、草灯に聞いている。
「警戒心がちょっと強いだけだよ」
草灯も立夏と初めて会った時は警戒されたが、警戒の仕方はこんなものではなかった。
「取って食やしないよ。草ちゃんと違って」
「オレだってしないよ。誤解を受けるようなこと言わないように」
「誤解ぃ?本当に誤解なのかねぇ?ってか、信用されてないんだ?」
「立夏には特別ね。ところでキオはなんでいるの」
「その言い方、ひどくない?オレはバイトだよ」
(べつに信用してないわけじゃないけど…)
大人2人の会話に入れる雰囲気ではないので、立夏は黙って聞く。
「おっとなしーなァ。本当に人見知り?」
「普段と変わらないよね」
うん、と答えかけて立夏は「なんでおまえが答えるんだ」と思って口を開くのをやめた。
「ガキってもっとやかましいモンだろ?写真で見るのと雰囲気違うな」
「………(そうかな?ってゆーか…写真、見せてんのか)」
だから自分のことを知ってるんだなと理解した。

草灯は写真を見せて、名前を覚えるほど自分のことを話しているらしい。
嬉しいような気もするが恥ずかしく感じる。
知らないところで一体、どんな風に何の話をしているのか気になる。
キオという人物もミミがなく、大人なんだと当たり前のことを思う。

キオは今度は立夏の隣に座った。
「この人、完璧ストーカーだよな、こういう大人になるなよ?」
「…ならないよ(そんなの…)」
「まぁ、立夏はこうはならないだろうけど」
「せっかくカワイイ顔してんだから、もうちょっと愛想よくした方がかわいがられると思うよー」
キオの言うことはもっともだと思うけれど、ほっといてくれと思う。
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