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両手を握ってくる草灯に、立夏はミミを横にして言う。
「なんでオレがプレゼントなんだよ?今度、ちゃんと用意するから…」
「立夏がいい。他のものは何もいらない。
ね、いいでしょ?」
軽く額に唇をつけてくる草灯に、立夏は困惑する。

誕生日だから。
だから、今日くらいは…と思うけれど。
一体、何をする気なのかわからない。

「プレゼント…って、なにすんの…?」
「キス。するのと、されるの、どっちがいい?」
にっこりときれいに笑う草灯に立夏はミミをピクピクとさせ、ベッドの上に横たわるしっぽの先を上げたり下げたりして、しばらく黙り込む。
「さ……」
される方、と言いかけた立夏に「じゃあ」と言って握られた手を引く草灯に立夏は焦る。
「ま、待った!やっぱりする方!」
ベッドの上で向き合う格好で立夏の腰に腕を回し、草灯は楽しそうな表情で「どっちでも」と言う。
思わず「する方」を選んでしまったが、後悔する。
「うー…うー…っ……」
「唸らない」
ミミを伏せて頬を赤くして、困った顔でうーうー唸る立夏はむっとする。
(なんでエラそうなんだよ)

突然、今日が誕生日だからと言ってリボンなんかつけられて、プレゼントにキスをせがまれて。
その上、なんで偉そうなのかと納得がいかない。
だけど別な日にプレゼントを渡すと言っても、草灯が欲しいものなんて立夏にはわからない。
それに小学生の立夏が使える金額のものは、きっと大人の草灯は欲しいと思えば簡単に買えるのだろう。
何をあげたら草灯が喜ぶのかなんてわからないし、他のものはいらないと言うのも、たぶん嘘じゃないと思う。
しょうがないか、と立夏は息をつく。

顔を近づけて、立夏はぺろっと少しだけその唇を舐めた。
「だ、だめ…?」
寝かせたミミをぷるぷる震わせて頬を赤くする立夏に草灯は笑う。
「30点」
点数をつけられて立夏はしっぽを膨らませる。
「なんだよ、それっ?」
「ちゃんとして」
やっぱり偉そうな草灯に立夏は唇を尖らせ、不満そうな顔をする。
意外と負けず嫌いな立夏は、草灯の肩に手を置くと軽く、唇を重ねる。
だけど、唇はすぐに離れていった。
「45点、かな」
「点数、辛いよ…」
さっきに比べて15点しか上がっていない。
むーっと眉を寄せて立夏はぼそりと不満げに言う。
やっぱり「される方」がよかったのかも知れない。
そんな立夏に草灯はクスッと笑う。
「もっと、ちゃんと出来るでしょ?」
「………」

いつも草灯がしてくれるように。
草灯が望んでいるキスがどういうものかはわかる。
だけど、それを自分が出来るのかというと、照れもあって難しい。
自分からするのと、されるのとでは違う。

「立夏。お願い」
額がつくほど顔を近づけて言う草灯に、立夏は視線を泳がせる。
顔が近すぎて照れくさいような恥ずかしいような…マトモに顔を見られない。
「目、閉じろよ…」
「はい」と答えて草灯は眼鏡を外すと目を閉じる。

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