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「立夏くん、これ。クリスマスプレゼント」
言いながらユイコはバッグからグリーンとレッドのリボンで口を閉じた袋を出して、差し出してくる。
つい先日、誕生日を迎えてユイコからはプレゼントをもらったばかりの立夏は少し気後れする。
「いいよ、そんなの…。こないだ、誕生日のプレゼントもらったばっかりだし」
そう言って、立夏は首に巻いているユイコから貰った手編み白いマフラーをつまんで見せる。
「それはそれ。クリスマスにプレゼント交換しようって約束したし」
「(そうなんだけど…)うん…じゃあ…」
立夏は自分のバッグから、小さな袋を取り出す。
そして二人でプレゼントを交換しあった。

「手袋だ」
「それをね、作ってた時に立夏くんの誕生日を聞いたから、大急ぎでマフラー作ったの。だからマフラーの方はボロボロなんだけど…」
「そんなの全然、気にならねぇよ。ありがとうな、ユイコ(手編みだー)」
立夏はユイコからマフラーとお揃いの白いミトンの手袋を貰った。
人にプレゼントなどあまりしたことがなく、まして女の子になんて何をあげていいかわからず、苦労して立夏が選んだユイコへのプレゼントは、小物入れだ。
「立夏くんもありがとう。大切に使うね!」
ユイコは嬉しそうな笑顔を見せる。
「何がいいのか全然わかんなくてさ。それ、実は草灯にそういうのがいいんじゃないかって言われて…。ほら、ユイコはけっこーピアスとかしてるし、そういうのを入れておくものがいいんじゃないかって」
「宝箱にするね」
にこにこと話すユイコに立夏も喜んで貰えて嬉しくなった。

冬休みに一緒に遊ぶ約束をして、二人は別れてそれぞれ帰宅した。

今日はこれから、草灯が迎えに来る予定だ。
それまでに支度を済ませておかなければならない。
とは言っても、旅行の準備は昨日のうちに済ませておいたので、支度と言ってもすることは殆どない。
いつも持ち歩いているバッグに、財布とデジカメを入れる。
カメラのメモリは沢山残っている。
携帯は草灯から連絡が来るので、机に置いてある。
ユイコから貰ったマフラーと手袋が早速役に立ちそうだ。
あとは、草灯が迎えに来るのを待つだけだ。

草灯が迎えに来て立夏は飛行機に乗り、旅立った。

今日は移動だけで目的地は宿泊するホテルだ。
電車から飛行機、電車に乗って更に今はタクシーの中だ。
移動だけで時間がかかり、もう陽が暮れて空は暗い。
時間はそんなに遅くはないけれど。
「立夏、疲れた?」
「ん、少しな」
タクシーの後部座席に草灯と二人で座り、立夏は苦笑して答える。
乗り物での移動は座っているだけだとはいえ、疲れるものだ。
しかし窓から見える風景に、立夏はすぐに釘付けになった。

ホテルまでの道のり、駅前からの通りの木々はイルミネーションに色どられ、とてもきれいだ。
こういう風景は東京にもあるけれど、なんだか違って見える。
まず違うのはここが北海道の札幌で東京とは違って雪があるということだ。
タクシーが信号待ちで大通り公園を横切る間にも、立夏はずっと窓の外の風景に釘付けになっている。
「綺麗だな」
草灯の言葉に立夏は振り向かずに黙って頷く。

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