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初日の出を見るために車をレンタルしていた草灯の運転で、車で草灯の家に向かうといつもよりすぐに着いた。

「立夏、知ってる?来年は1秒だけ、いつもの年より長いんだよ」
午前8時59分59秒の後、本来は数えない60秒目が足される。
草灯の説明を聞いて、立夏は少し首を傾ける。
「ふぅん?でも1秒なんてすぐだし、1秒長くても得した気になんないんじゃないか?」
「そうでもないかもよ。1秒あれば1回キス出来る」
「……微妙だな…(それ、得って言うのか?)」
「いつもの年より1秒多いなんて、そうあることじゃないんだし。1秒長く、立夏と居ることが出来る」
草灯の言葉に立夏はミミをピクピクと動かす。
やっぱり言うことがうまいと思う。
そんな言葉に嬉しくなってしまうのだから。
「なぁ、初日の出、何時くらいに出掛ける?」
「夜中のうちに出るよ。間に合うように」
渋滞することを見越して早めに出かけると言う草灯に、立夏は「そっか」と答える。
「行く途中は眠てていいよ」
「うん。多分、そうなると思う」
言われなくてもきっと一晩中なんておきていられないだろうと立夏は自分でも思う。
普段寝る時間を過ぎると習慣からか、立夏は欠伸をし始める。
「というか、もうすでに眠そうだね」
「今日は昼寝したんだけどな」
今日は起きてるつもりで昼寝をしたにも関わらず、眠くなってきた立夏は苦笑する。
日付け変更の午前0時まであと1時間以上ある。
「少し寝てたら?」
「ん、でも」
「0時前に起こしてあげるよ」
「そうじゃなくて。オレが寝たら草灯ヒマじゃん」
立夏が言うと、草灯はくすっと笑う。
「そうでもないよ」
「そうか?」
草灯はこれから運転しなければならないので、ビールも飲んでいない。
じゃ、ちょっとだけと言って立夏はベッドに向かう。
「なに?草灯も寝る?」
「ちょっとだけ」
くっついて来た草灯に立夏は場所を開け、一緒にベッドに横になる。
「これで朝まで寝てたら笑うよな」
携帯を開いている草灯に言うと、草灯はパチンと携帯を閉じる。
「目覚ましセットしたから大丈夫」
そう言って携帯を枕元に置くと、草灯は立夏に抱きつく。
眠そうにしていた立夏はすぐに寝てしまう。
相変わらず寝つきがいい。
前髪を避けて額に唇をつけても、まったく目を覚まさない。
ピリリリ…と携帯が鳴って草灯は枕元の携帯の目覚ましを止める。
眠っている立夏を見ているうちに、草灯も寝てしまったようだ。
隣の立夏を見ると携帯の音で目が覚めたようだが、まだ半分眠っているようでミミをピクピクと動かしている。
「立夏、起きて」
「ん…」
声を掛けると聞いてはいるようだが、目を閉じたままの立夏の肩を軽く揺する。
「立夏」
「んにゃ…」
あまり長い時間寝ていないせいか、立夏はなかなか目が開かないようだ。
もそもそと動きながら、億劫そうに返事をする立夏に草灯はクスクスと笑う。返事がかわいい。
「うー…ン…」
のそのそと起き上がると立夏はミミを寝かせたまま、ごしごしと目を擦る。
「何時…?」
「あとちょっとで0時だよ」
草灯は一度起きて冷蔵庫からミネラルウォーターのボトルを持って来て立夏に渡す。
立夏が水を飲んでいると草灯はテレビをつける。
あまりテレビは見ない方だが、0時のカウントダウンをするからだ。

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