2p
草灯は一服してから戻ろうと煙草に火をつけ、窓の外を見る。
昨夜からずっと降っていた小雨は今もしとしとと降り続けている。
だけど雲はあまり厚くはないようだ。
正午には止んで夕方には晴れそうだ。
「草ちゃん、戻らないと…何してんの?」
「晴れるかなと思って」
「そういや、今日は七夕だな。晴れればデートってわけ?」
作業に戻らない草灯を呼びに来たキオはそんなことを言う。
(七夕か)

7月7日、年に一度だけ天の川を渡り、牽牛と織女が逢瀬をする。
雨が降ればその年は会えない。
今日はこの分だと晴れそうだし、空の上ではデートだろうか。

「七夕にかこつけてデートか。雨が止んだって終わらなきゃ会えないんだぞ。だいたい彦星と織姫ってイチャついててサボってたから離れ離れになったんじゃなかったっけ?」
「そんな話だっけ?」
「とにかくデートだろうがバイトだろうが何でも、さっさと終わらせるしかないだろ。期限過ぎたら教授受け取ってくれないし単位もらえなくなる」
「そうだね」
そう答えて草灯はアトリエに向かう。
「なー、草ちゃんて願いごとある?」
「願いごと?」
「七夕だし。オレはねー…」
宝くじを当てて南の島でひと月ほどバカンスに行き、お金に不自由なく絵を描いて暮らしたいとキオは話す。
もちろん、そんなことは現実にはならないと思うから、言っているのだ。
夢を見るだけならタダだ。
どんな希望を持っていても。それは自由。
(立夏なら何を願うのかな)
そう思いながら、草灯はキオの質問に答える。
「そうだな…。とりあえず今のところは課題が仕上がることと、雨が止むことを願ってるよ」

願いは立夏に完全な支配を受けること。
戦闘機はサクリファイスのもの。
立夏の願いを叶えることが自分のすべきこと。
心を、意志を持つのは立夏だけ。

だけど願う自由を許されるのなら……。

きみとずっと、一緒にいられますように。
この腕から、奪われ、失うことがないように。
いつまでも柔らかく暖かいきみを抱きしめていられますように──。

〜END〜

七夕・草灯バージョンです
なんかちょっと女々しい感じしますが、そこは草灯だから(わー…)
8月になって七夕?(プ)とか思われるかも知れませんが、地方によっては8/7なので許して下さい
続きの立夏バージョンもあります☆
2005.8.6 UP


続編>>>ずっといっしょに…
≪Back
≪季節行事menu
小説トップ
HOME
無料ホームページ掲示板