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草灯はツリーの他に持っていた大きな銀色の袋を、ベッドに座っている立夏の膝に乗せる。
「はい、クリスマス・プレゼント」
「…あ。オレ…ごめん、何も用意してなくて…」
はっと我に返って、立夏は草灯へのプレゼントを用意してないことを詫びる。
草灯はくすっと笑うと、立夏にあげた袋を開けて中に入っている物を取り出す。
「…なに?」
中から取り出した物を草灯は立夏の肩に掛けた。
それは真っ赤なサンタクロースの衣装だ。
「かわいいサンタさんだね」
そう言って草灯は笑い、そこでようやく立夏はなんとなくわかった。
「…オレが?サンタクロース?」
「恋人がサンタクロースって言うでしょ?」
草灯が言うと立夏はミミを伏せる。
「ば…バカじゃねぇのっ?プレゼントってこれかよ」
頬を赤くする立夏に草灯はくすくすと笑う。
「サンタ立夏がオレにプレゼントくれたら、ちゃんとしたプレゼントあげるよ」
「いいよ。べつに…プレゼントなんて」
立夏はふいっとそっぽを向く。

ついこないだ、ほんの4日前に誕生日プレゼントを貰ったばかりだ。
この上、またクリスマスプレゼントなんて…。
プレゼントを用意してなかったことを悪いなと思う。

「こないだ、誕生日プレゼント貰ったばっかりだし」
「誕生日は誕生日。生まれた日のお祝いと、クリスマスは別でしょ」
「でも」
ミミを下げる立夏をよそに、草灯は小さな箱を出す。
「ケーキも買って来たんだよ。ちょっと小さいけど」

ツリーにケーキにプレゼント。
それらを抱えてどうやって2階のベランダまで上がったのか。
わざわざ、自分1人のために──。

「草灯…」
「あっ」
ケーキを箱から取り出す草灯の腕を立夏は掴むと、掴まれた拍子にケーキのクリームに指が刺さってしまう。
「あ、ゴメン」
なんだかおかしくなって、立夏はクスクス笑ってしまう。
「急に押すから…」
「押したんじゃなくて…」
すっと目の前に突き出された指に立夏は言葉を途切らせる。
差し出された指についたクリームを舐めろとでも言いたいのだろう。
立夏はぺろっと舐めてみる。
草灯の指先についていたクリームの甘さに、立夏はパタパタとしっぽを振る。
クリームの甘さに味をしめた仔猫には、もうケーキしか目に入らないようだ。
草灯はごそごそとポケットから、フォークを2本出して、立夏は笑う。
「何でも入ってるんだな」
わざわざフォークまで持って来るなんて用意周到と言うべきか、なんだかおかしい。
「なんかコレ、ヘンじゃないか?」
「そうだね」
小さなケーキを床に置いて、2人してフォークでつついて食べるなんて、行儀が悪いしヘンな状況だ。
だけど楽しいと立夏は思う。

ケーキを食べると、立夏はベッドに横になる。
「おなかいっぱい」
寝転がる立夏に草灯はベッドにもたれかかる。
ふと、枕元に置いてある携帯電話が目に入って、草灯はそれを手にすると、ものすごい勢いで立夏が奪った。
「勝手に見るなよっ」
「それ、オレに送るつもりだったんでしょ?だったら見たって」
問題はない、と言おうとしたが立夏はぷーっと頬を膨らませている。
その頬を草灯はくすくす笑いながらつつく。
「そんな顔しないで。せっかくのクリスマスなんだから」
………」
草灯に言われて、立夏もそれもそうだなと思う。

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