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憤慨しながら歩いていると、首から下げた携帯電話がまた鳴り、開いてみると着信は奈津生からだった。
「もしもし?」
何の用かと思って出てみると、奈津生が慌てた様子で言う。
『立夏?急いでこっち来い』
「え?何かあったのか?」
『とにかく早く来い!』
今度は瑶二が叫んで来て、声の大きさに立夏は思わず携帯を耳から離す。
だけど、急いで来いなんて一体どうしたのか気になる。
こっちに、というのは草灯の家のことなのだろう。
そう考えて立夏ははっとする。
もしかして、また草灯が1人で戦って怪我をしたとか…?
「まさか、草灯に何か…」
『そう、草灯が大変なんだ。だから早く来いよ!』
そこでブツッと電話は切れてしまう。
状況がよくわからないが立夏は走って草灯の家に向かった。

階段を駆け上がってノックもせずに立夏はドアを開けた。
「草灯は!?」
はぁはぁと肩で息をして立夏は部屋の中を見回すと、部屋の中に草灯の姿はどこにもない。
床に座る瑶二は腹を抱えて笑い転げている。
「すっげー!早ぇー!」
「いらっしゃい、立夏」
奈津生はにっこりと笑っていて、立夏はしきりに目をしばたたく。
「草灯は…?」
「草灯ィー?いねぇーよ」
「は?だってさっき…」
「ああ。あれ?嘘。今日ってエイプリルフールじゃん?」
「それにしても立夏、おまえどこに居たんだよ?すっげー来るの早かったな」
「ホント。そんなに草灯が心配?」
ニヤニヤ笑う瑶二とクスクス笑う奈津生に、騙されたとわかって立夏はかーっと顔を赤くさせ、ミミを伏せる。

ユイコに騙された直後にまたしても。
そう思うと悔しくてたまらない。
それに草灯が心配で走って来たのかと言われ、すごく恥かしくなる。

「あ、おい、立夏」
立夏は無言で草灯の家を出た。
「…なんだ?あいつ」
「怒ったかな」
首を傾げる瑶二に奈津生は肩をすくめた。

* * *


「……て、ことがあって」
「なるほど」
ベッドの上で枕を抱える立夏から、不機嫌な理由を聞いて草灯は納得した。
今日は4月1日、エイプリルフールだ。
だからいきなり「おまえも騙しに来たのか」なんて疑いを掛けられたようだ。
2回も騙された後だとはいえ、エイプリルフールだからとはいえ、すっかり懐疑的になってるようだが、顔を見るなり疑ってくるあたりずい分と信用がないものだと草灯は思う。

ユイコにしてみたら、ほんのイタズラのつもりだったのだろうが、立夏にはシャレにならない冗談だった。
立夏は元から嘘が嫌いだと言っているし、友達にそんな嘘を、たとえイタズラでもされたら立夏が怒るのは当然の結果のようにも草灯は思う。
たしかに『ついていい嘘』と『シャレにならない冗談』というものはあるが、ユイコの嘘は少々悪質だったかも知れない。

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