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「つけてあげようか」
「う、ん…」
草灯は立夏の持っている箱からペンダントを取り、立夏の首にそれをつけてやる。
少し鎖が、子供の立夏がつけるには長いかと思ったけれど、黒のタートルネックを着ている立夏の服の上からだと、ちょうどいい長さだ。
「すごく似合うよ、立夏くん」
「そうかな…?」
照れながらも立夏はゆっくりとしっぽを振って喜んでいるようだ。
「ありがとう、草灯」
「どういたしまして。気に入ってくれたかな」
立夏がお礼を言うと草灯はにっこりきれいに笑って問いかけ、立夏はペンダントヘッドをぎゅっと握ってこくん、と頷いた。

「わたしもプレゼント。開けてみて?」
ユイコが差し出してきた袋は草灯のものよりだいぶ大きい。
「気に入ってくれると、いいんだけど…」
ユイコは少し心配そうにプレゼントの袋を開ける立夏を見つめる。
その袋の中身はすでに草灯は知っている。
立夏の誕生日が今日だと、昨日電話でユイコが話した時に何をあげるのかユイコから聞いていた。
「マフラーだ」
ユイコからのプレゼントはふわふわと毛足の長い毛糸の白いマフラーだ。
「へえー、触り心地もいいな」
「それ、ユイコちゃんの手編みなんだって」
「えっ、本当に?」
マフラーの手触りを確かめていた立夏は、草灯の言葉にユイコを見る。
「うん、よく見たら、すごく下手で恥ずかしいんだけど…」
「(うわー手編みだー)全然わかんないよ。すごいなー」
不器用な立夏は手編みというだけで、感心してしまう。
自分のためにわざわざ作ってくれたんだと思うと、とても嬉しい。
「よかったら、使って…?あの、ほら。寒いからしょうがなく使うかーって感じで」
あんまりにも感心して喜ぶ立夏に、ユイコはえへへ、と笑いながら照れ隠しに言う。
「ありがとう、ユイコ。大事に使うな。でも使うのもったいないな。汚しそうだし」
「そんなの気にしないで!ほんと、ただまっすぐ編むだけなのに下手だからっ」
「立夏は白がよく似合うよね」
「そうかなー。オレはミミも髪も真っ黒だからかな?」
「ユ…わたしも立夏くんは白が似合うと思って」
草灯とユイコに言われて立夏は、自分の他人の中のイメージというのは面白いなと感じる。

帰り道、立夏はユイコにもらった白いマフラーをコートの上から巻いて歩く。
コートの中には、草灯がくれたペンダントが揺れている。
「立夏が欲しいものがない、なんて言うから何がいいか迷ったよ」
「だってべつに……(昨日が嬉しかったし)」
ごにょごにょと言う立夏は本当のことが言えない。
でも、嬉しかったという気持ちは、ちゃんと伝えた方がいい気がする。
「昨日、すごく…嬉しかったから……。だから、本当にいいって思ってたんだ」
少しミミを伏せて立夏は顔を上げずに言う。
すると、優しく頭を撫でられた。
「立夏と知り合えなかった分のお祝いも、してあげるよ。
11才の誕生日も10才の誕生日も、その前も…12年分のお祝いをしてあげるよ」
「………」
立夏は隣を歩く草灯を見上げる。

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