スウィーツ
「草灯、ケーキって作れる?」
立夏から唐突に聞かれて草灯は答える。
「ケーキ?まあ、一応は…あんまり作ったことないけど。
どうして?作って欲しいの?」
草灯が言うと立夏は首を振って言う。
「違うんだ。今度、調理実習でケーキを作るんだけど…オレ作ったことないし、どうせなら美味しいのがいいし、練習したいなって思って」
だから作り方がわかるなら、美味しく作るコツを教えて欲しいと立夏が言う。
「いいよ。じゃあ材料そろえたり時間もかかるだろうし、今度教えてあげるよ」
草灯はにっこりと笑って承諾すると、立夏はしっぽを振って「やった」と笑顔を見せた。


ケーキのスポンジを焼く間に立夏は生クリームを泡立てる。
クリームを泡立てるのもなかなか大変な作業だ。
今日は立夏がケーキ作りのコツを教わっているので、手出しはするなと言われているので、草灯は黙って立夏の様子を見つめる。
慣れない手つきの立夏は、元からの不器用さも手伝って、頬や鼻の頭、両手もエプロンも、ミミにまでクリームを飛び散らせている。
それでも懸命にボウルを片手に泡立て器で生クリームをかきまぜる立夏は、力んでいるせいか長いしっぽがピンと立っていてとても愛らしい。
しかし、立夏の顔だけではなく床にもテーブルにもクリームが飛び散っていて、これは掃除が大変そうだ。



「やっぱり手伝おうか?」
草灯が手を伸ばすと立夏はボウルを抱えたまま体の向きを変え、「ダメ!」と言う。
「練習なんだから、草灯が手伝ったら何にもならないだろ。オレがやるの」
立夏はけっこう頑固な方で、こうと決めたらなかなか曲げない。
そんな立夏に草灯はくすくす笑いながら返事をする。
「はいはい」

ツノがたつまで、と教えたので立夏は「腕がダルい」と言いながらも一生懸命、休み休みにクリームを泡立てる。
途中、汚れた手で抱えたボウルを手が滑って落としてしまったり、と事故はあったがなんとかクリームは出来上がってきた。

黒いミミについた白い生クリーム。
(あーあ…自分をデコレーションしてどうするんだろうね)
頬杖をつきながら草灯はじーっと立夏の様子を眺める。

なんだかケーキよりも、仔猫の方が美味しそうだ。

草灯は立ち上がると立夏の肩を掴んで屈み、鼻についたクリームを舐める。
「っ!な、なにすんだよっ」
「クリームがついてるから」
驚きと恥ずかしさでミミを寝かせている立夏の赤い頬についたクリームも舐める。
「ン、立夏甘いね」
「バカ…(クリームじゃん)」
照れてミミを寝かせる立夏に草灯は言う。
「クリームでデコレーションしてて、立夏おいしそう。食べたいなぁ」
ぺろっとミミについたクリームを舐めると立夏はそっぽを向いてしまう。
「オレは食べ物じゃないし」
ぼそぼそと喋る立夏に草灯はつい笑ってしまう。
笑い出す草灯に立夏は不審な目を向ける。
「なんだよ?」
「いや、何でもないよ」
「何でもないのに笑うわけないだろ」
「ん、オレにとっては立夏は甘いお菓子みたいなものなんだけどな、と思って」
「はぁ?(なんだそれ)」
ワケわかんねぇと立夏は言うが、「食べ物」とは言い得て妙だと草灯は思う。


立夏の初めてのケーキ作りは、不器用な立夏の飾りつけで多少見栄えは悪いが、味はおいしかった。

〜END〜

LOVELESS祭への投稿作です
不器用な立夏はドジっ子だとかわいいと先日、チャットで話してたのですが、ちょうどよく(?)リクリレーで「汚れ」とか「ケーキ」というのが出たので、かいてみたです
絵がものっそいブサイクなのですが…
スキャナがないので携帯写メなんですけど、画像が暗い…!
えんぴつ画だからちょっと見えにくいですね…
投稿:2006.12.7
再録:2007.1.7

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