Sweet Day
「14日?あ、ダメだ」
2月14日の予定を聞くと、立夏はあっさりとそう答えた。
立夏は塾も習い事もしていないし、早めに言えば友達と遊ぶ予定よりも早く約束が出来るだろうと思っていたが、少々甘くみていたようで、すでに売約済みだったようだ。
「だめ、なの?」
「だって14日って水曜日だもん」
「ああ、そうか…」
立夏は毎週、水曜日だけは用事があると言い、どんな予定も水曜日だけはその用事を最優先する。
バレンタイン・デーの2月14日は水曜日だ。
日付けばかりに気をとられていて、曜日までは草灯は確認をしていなかった。
「でも夜は家に居るでしょ」
「うん。それはまぁ…。14日じゃないとダメなのか?13日とか15日なら空いてるけど?」
「バレンタインだよ?」
草灯が言うと椅子に座っていた立夏はぴくんとミミを動かす。
「言っておくけど、チョコはやらないぞ」
「ケチ」
冗談で言うと立夏はムッとした顔をする。
「うるさい。オレは男だぞ。女の子でもあるまいし、なんで」
「立夏にチョコ渡そうと思って」
文句を言う立夏の言葉を遮るようにして草灯が言うと、立夏はぱちぱちと大きな瞳を瞬きさせる。
「好きな人がいたら男女は関係ないでしょ。女の子からってなってるのって日本だけだっていうし」
「そ、うなんだ…?」
立夏は長い尾を身に添わせて視線を泳がせる。

草灯を好きになってから立夏はまだ日も浅い。
そもそも恋愛経験そのものが殆どない立夏にとって、友達への好きと特定の相手への好きと、どう違うのかも時々わからなくなる。
なんとなく、年齢差もあって恋人同士というには何か足りない気がするし、自分たちの関係をそう呼ぶことにも、くすぐったいような気恥ずかしさがある。

そわそわと落ち着かない様子で照れている立夏に草灯はくすっと笑みをもらし、問い掛ける。
「じゃあ夜は?夜なら居るよね?」
「うん…それは、まぁ…」
水曜日は用事があるといっても、門限には帰宅する。
小学生が夜に出掛ける予定などあるわけもないので、頷くと草灯はにこっと笑う。
「じゃあ、14日の夜に」
「うん」

こうして、バレンタインの2人の予定は決まった。
草灯バージョン≫
立夏バージョン≫
≪Back
≪草立menu
小説トップ
HOME
無料ホームページ掲示板