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「好きだよ、立夏」
そう言って草灯は手にとったままの立夏の指に口づける。
出会った日と同じように──。

あれから1ヵ月。
もっとずっと長く一緒にいるような感覚もある。
たった1ヵ月。
草灯と出会ってから立夏は色々、振り回され心を乱されてばかりで。
会うたびに「好きだよ」なんて言って、キスされて。
まだ1ヵ月なのにずいぶん長く一緒にいるように錯覚してしまうほど、草灯がいる日常が今では当たり前になっている。

はじめは信じることが出来ずにいた草灯に、立夏は少しずつ慣れされてしまっている。
そうして、淡いふわふわとした感情が立夏の中に芽生え、それはしっかりと根を張りつつある。
草灯に対する特別な感情が成長していくことに、立夏はまだ戸惑ってばかりだ。
そんな立夏にかまわず、草灯は好きだと言い、キスしてくる。
愛情に飢えた立夏にとって草灯の言葉は、まるで魔法のように、立夏の幼い恋心の成長を促していく。

(もしかして)
言葉を操る草灯に、暗示をかけられているんじゃないだろうか?
何度も「好きだよ」なんて言われて、暗示をかけられているのでは?
そんな疑問が立夏の心に浮かんだ。

「そろそろオレのこと好きになった?」
「なっ…!ならねぇよっ!(バカッ)」
草灯のからかいに立夏はびくっとして、咄嗟に否定してしまう。
否定する立夏に草灯は苦笑しながら、「努力不足かな」などとコメントをする。
「でも、これは貰っておく」
「よかった。突き返されなくて」
にこっと笑う草灯に立夏は眉根を寄せ、上目遣いに少し恨めしげに、睨むような視線を向ける。
突き返すなんて、そんなことするもんかと立夏は思う。

草灯がくれたチューリップの花束を受け取ったということは、『愛の告白』は受け取るということだ。

素直に好きだとは言えないけれど…。
草灯に伝わっただろうか?
きっと大人な草灯にはお見通しかも知れない。

また1ヵ月後も半年後も1年後も、一緒に出会ったことを二人で喜ぶことが出来たら…と立夏は思う。
その時には自分はもっと草灯を好きになっているだろうか?

〜END〜

LOVELESS祭に投稿したコラボ作品です〜
朝倉リコさんのイラストを元絵に書かせて頂きました
草灯がピンクのチューリップの花束を立夏にあげているイラストで、どんな風にあげるのかな〜と思って書きました
ちょうど、わたしの立夏のイメージってチューリップなのでした
自意識過剰に「好きになった?」とか聞いたらウンって言うかと思ったら大間違いです、我妻さん
初出:2006.1.17
再録:2006.3.1

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