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弟をひとりにしてしまうことを。

二度とこうして触れたり出来なくなることを。

「? 清明…?」

このまま、感情のままに動いてしまったら、きっとその時は後悔するだろう。
立夏はキスしたことには気付いていないようだ。

「なんでもないよ。少し顔が見たかっただけ。起こしてごめん。
もうおやすみ」
やわらかく微笑んだまま、清明は立夏の肩をそっと押して、ベッドに横になるよう促すと、そのとおりにする立夏に清明は肩までふとんをかけてやる。
暗い部屋の中で立夏は不思議そうな、あるいは戸惑うような表情で、真意を問うような視線でじっと見上げてくる。
「眠るまでここにいるよ」
「うん…?」
おやすみ、と言って頭や頬を撫でてくる清明に、聞きたいことはあったが、立夏はすぐにうとうとして、やがて寝息をたてはじめる。


これから僕に起こることは、おまえを悲しませるかも知れない。
苦しめるかも知れない。

だけど、強いキミだから。
乗り越えてゆくだろう。

すべては立夏のため──。

それを知った時、怒るかも知れない。
だから今は何も知らないままで……。


名前よりも強い絆があることを、信じられたら今よりももっと強くなっていくだろう。

完全に熟睡した立夏の額から前髪を払い、軽く口づけ、もう一度だけ唇にゆっくりとキスする。
もう目覚める気配はなかった。
そのことに安堵しながらも、少しだけ寂しく感じる。


残された時間はもうあまりない。
自分のこの世界の終わりが、近づいている。
別れを儚む気持ちが、今はほんの少しだけ、ある。

──もう少しだけ。

願わくば、あともう少しだけ…笑顔を見ていたい。


『やあ。
ぼくが死んだら、
おまえがこれをみつけてくれると思っていたよ。
ぼくが死んだら、それは殺されたということだから、ぼくを殺す人達のことを、ここに書いておく。

(必ずみつけてくれると信じているよ)


ぼくはななつの月に殺される。


立夏へ。
おまえに 戦闘機を残していく。』


──そして
やさしく、かなしい悲劇が訪れる。

〜END〜

清明×立夏でした〜
立夏にとって清明は唯一の支えだった人で、一等特別な存在だったと思います
清明が死んだ理由は不明なままですが、私的には立夏のためなのではないか?と思ってます
二人の関係が恋愛に満たないギリギリのところで止まってしまった、という感じがする
そのへん、ちょっとうまく表現出来たのかどうか…
このお話は多輝かりん様へ捧げますvv
読んで下さり、ありがとうございました!
2004.6.10 UP

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