虫刺され
図書館で調べものをして帰宅した清明は、家の照明がひとつも点いていないことにまず気づく。
母親は今日も今朝から体調が悪く部屋に閉じこもっていたので、仕方ないとは思うが。

自分の部屋のドアを開けると部屋も薄暗い。
部屋が暗いのでいつもこの部屋にいるはずの弟は自分の部屋にいるのかと思いながら、電気をつけてみると、窓際の床で眠りこんでいる立夏を見つけた。
遊び疲れて日向ぼっこをしているうちに、床で眠ってしまったのだろう。
しかし、窓は全開で涼しい夜風が入り込み、風邪をひきかねない。
「立夏、もう夜だよ。こんなところで寝てたら風邪ひくよ」
肩を揺すって起こすと、仔猫はミミをぴくぴくと震わせ、「ううん…」と声をもらす。
清明は立夏の柔らかい黒髪を撫でると、プールの塩素の匂いがふわりとした。
目を覚ます気配もないのでしょうがないなと思い、ベッドで寝かせようと抱き上げる。
ベッドに下ろすと立夏はもそもそと寝心地がいい姿勢に寝返りを打ち、すーすーと健やかな寝息をたてる。
食事の準備が出来るまではいいかとそのまま寝かせておこうと、開けっ放しの窓を閉め、眠っているタオルケットを掛けようとして、ふと清明は気づく。

ショートパンツ姿の立夏の太腿に1匹の蚊が止まっている。
清明はそれを見て眉間にシワを寄せて顔をしかめた。

プ〜ン…と羽音をたて、蚊は立夏の足から飛んだ。
その蚊が自分の方に飛んで来て、清明はぱしんと両手を打つ。
両手をを開くと無残に潰れた蚊の死骸と血が手の平についている。
清明はそれをティッシュペーパーで拭き取ると、立夏にタオルケットを掛け、部屋を出た。
洗面所で念入りに手を洗い食事を作る。

かわいい弟の血を吸うなんて、まったく憎らしい虫だと清明は思う。

〜END〜

清明様は蚊でも立夏たんに触れるモノは許さないと思います!
ましてや血を吸うとかとんでもないことなのでは?
でも蚊を殺した手はむっちゃ念入りに洗いそうだ(潔癖症だから)
拍手:2006.8.22
再録:2006.9.9

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