『Juel』
1月も下旬になって、スーパーやコンビニ、デパートでもバレンタインの特設コーナーが出来ている。
女子高生やOL、子供連れの主婦、小学生の女の子たちがバレンタインに渡すチョコを選んでいる。
楽しそうに友達と話したり、真剣な眼差しでショウケースを見つめたり、それぞれ意中の人や彼氏に渡すチョコを選んでいる。

そんな彼女たちを横目で眺め、草灯は考える。
(バレンタインか…)
立夏はきっと、チョコなんてくれないだろうな。

海外では男女を問わないバレンタインだが、日本では女の子のイベントという傾向が強い。
立夏はしっかりと『男の子』で、バレンタインのチョコを女の子に混じって買うなんてしない気がする。
それならそれでもいい。
だったらこちらから渡せばいいだけのことだ。

草灯は夜、奈津生と瑶二が寝てからパソコンを開く。
彼らが起きていると普段は何をしていても関心なんてないのに、こと食べ物のことになると目敏くて、きっとあれこれと口を出してきてうるさいに違いないと思い、深夜に一人でゆっくりと調べようと考えていたのだ。

ネットでもバレンタインのチョコの特集ページがあり、商品紹介だけではなくオンラインショップで予約注文出来る。
年齢層に合わせた品を取り上げているページや、海外の有名店から取寄せたりも出来る。
チョコで有名な店の通年の売れ筋のものや、この時期だけに作られる特別なもの、色々とある。
一口にチョコと言っても、ベルギーやフランス、ドイツ、スイスなど、本場と言われる国も多く、それぞれに特徴や歴史、品質や美味しさへのこだわりもある。
小さな箱に芸術的な個性豊かな一口大のチョコが詰め合わせてあるものや、一箱が数千円もする高級なもの、一流のパティシエがオーダーメイドで作ってくれる、値が張るものもある。

金額は問題ではない。
高い安いの金額的な価値よりも、見た目と最終的にはやはり味だろう。
こうして見るとスウィーツも芸術品なのだとよくわかる。
シンプルなものから貝や花を模ったもの、形も様々。
味はもちろんのこと、見た目にもテーマやこだわりを持って作られているのだろう。
草灯も芸術を学ぶ学徒であり趣味が料理なので、そういった美的センスやこだわりを持って作るのは絵も料理も菓子も同じだと感じる。

大人ならシャンパンやワインなどお酒に合うチョコもいいが、あいにく立夏はまだ小学生だ。
そういった楽しみ方が出来るようになるまで、ちょうど二十歳の草灯との年齢差と同じだけの年数がかかる。
それはそれで、あと数年後の楽しみだろうか。

しかし、いくつかのページを見ていいなと思うものはあるが、何となくピンとこない。
立夏は子供だからビターなものよりは、甘いミルクチョコレートの方がいいかも知れない。
ふわりと口の中で溶けるような…それでいてしっとりとしたものはないだろうか?
立夏がしてくれるキスのような、そんな舌ざわりのものがいい。
それでいて、包みを開けたら目を楽しませてくれるようなものを探してみる。

しかし、こうして見ているとどれもこれもがよく見えて、どれがいいか吟味するほどにわからなくなってくる。
やはりショップに足を運んで自分の舌で選んだ方がいいだろうか?
しかし大人と子供という差もあるし、味覚は親兄弟であっても好みが違う。
いっそ立夏本人にどれがいいか選んでもらえればいいのだが、こういうのはそういうわけにはいかない。

バレンタインまであと数日。
時間はまだあるとはいえ、人気商品などは売り切れてしまうだろうから、早く決めなければならない。
じっくりと吟味をしつつ、出来るだけ早く。

〜END〜

バレンタインの特集ページをいくつか見ました
有名なトコから本場の国のセレブ御用達とか伝統のあるショップのお取り寄せとか色々ですね
ほんと、見てるとわかんなくなった
こういうの見てると、どれもこれも美味しそうであげるより食べたいよね〜(笑)
続きを書いてアップしますのでお待ち下さい〜
前置きってことで☆
拍手:07.2.8
再録:07.2.14

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