Special Day
「ハピバースデ〜草ちゃーん!はい、プレゼント!」
朝、顔を合わすなりキオはテンション高くそう言って、正方形の平たい包みを渡してくる。
「ああ…誕生日だっけ」
渡されたプレゼントを受け取った草灯にキオは肩を落とす。
「反応薄っ!」
「忘れてた」
ありがとうと言って草灯はキオからの誕生日プレゼントを受け取る。
「忘れてたって…まったく。草ちゃんて自分のこと構わなさすぎ。
あ、それ割れモノだから落とさないようにな」
「誕生日祝わってくれるなんてキオくらいしかいないからね」
苦笑する草灯にキオはにやりと笑って肘で草灯を小突く。
「またまた、いるクセに。今日は祝わってもらうんだろ?立夏に」
「立夏?ああ、そうだね。
でも立夏は今日がオレの誕生日だなんて知らないから」
「そーなの?」
割れものだというプレゼントをバッグに入れて言う草灯に、キオは意外そうな顔をする。
「教えてないものを知るわけがないでしょ」
「自分で忘れてるくらいだもんな。てっきり今日は立夏と誕生日デートかと思ってた」
「今日は水曜だから立夏は都合が悪いんだ」

立夏は毎週、水曜日は用事があると言って水曜日は迎えに来るなとも言われている。
立夏の友達のユイコいわく立夏は塾に行ってもいないし、習いごとをしているわけでもないという。
毎週水曜日にどこで何の用事があるのかわからない。
キオはフーンと答えると、草灯の肩に手を置いて顔を近づけて言う。
「そんじゃキオさんが祝わってやろうか?バースデー特別でサービスするよ〜?色々っ」
草灯の肩に腕を絡ませ、にやにやとキオは笑う。
「今日はちょっと都合悪いんだ」
水曜日は都合が悪いと立夏は言っていたが、夜には家に帰るはずだ。
さっきまで自分の誕生日などどうでもよかったが、立夏に祝ってもらいたくなった。
迎えに来なくてもいいと言っていたが、夜なら会えるだろうかと草灯は考える。
「誕生日になんか用事あんの?忘れてたんだっけか。誕生日くらい自分の好きにしてもいーんじゃないの?」
「そうかな」
「誕生日くらいはちょっとくらいのワガママも許されるモンじゃん」
「なるほど」
キオの話に草灯はそういうものかと納得するが、キオは草灯が何を考えているのか気付いていない。
「都合悪いならしゃあないな」
「気持ちだけ受け取っておくよ」
「気持ちだけ、ね」
他意がない感謝の言葉だったが、キオは何か曲解したようだ。


午後の授業を放棄して草灯は立夏の学校の校門で、いつものように立夏が出て来るのを待つ。
水曜日はクラブ活動があるそうで、普段より帰宅する生徒の数が少ないように思う。
しばらくするとポケットに両手を入れて歩く立夏の姿を確認する。
「立夏!」
少し大きな声で呼ぶと気付いたようで立夏は小走りに駆け寄って来た。
「水曜は来なくていいって言ったろ」
少し困ったような顔をしている立夏に草灯は話す。
「うん、覚えてるよ。でも立夏、お願いがあって来たんだ」
「なに?」
何を言われるのかと少し警戒して眉を寄せてミミを伏せる立夏のさらさらした黒髪を撫でて草灯は打診してみる。
「夜でいいから、ちょっとオレにつきあって欲しいんだ」
「いいけど…夜に何かあるのか?」
「誕生日だから立夏と居たいなと思って」
草灯が答えると立夏はぴくっとミミを動かす。

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