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「草灯も入って来たら?」
「はい。立夏、オレが出て来るまで寝ないでね」
「うん?わかった」
「飲み物、冷蔵庫に入れておいたよ」
冷蔵庫を指差して言うと、草灯もシャワーを浴びにバスルームへ行く。

立夏は頭にタオルを被ったまま、ベッドに置きっぱなしだったデジカメの写真をチェックする。
(イルミネーションきれいだったな。すごい人だったけど)
来年から工事があるとかで、しばらく見納めになるかも知れないという話だった。
人が多くて立ち止まってゆっくり写真を撮る余裕はなかった。そのせいでぼやけてしまっているけど、これはこれできれいだと思う。
他にも大きなクリスマスツリーだとか、色々写真を撮った。
デジカメの電源を落として、立夏は再び頭をごしごし拭きながらバッグから携帯を取り出す。
ユイコからのメールの着信が入っていて、立夏は携帯を開いてメールを読む。
ユイコからのメールはクリスマスメッセージだった。
楽しいクリスマスを過ごして…というユイコらしい、優しい言葉のメッセージに立夏は返信する。
ついでに弥生さんにもメッセージを送る。
喉が渇いたので買って来た飲み物を冷蔵庫から出して、喉を潤す。
今夜泊まるこの部屋は、わりと部屋の造りが広くてゆったりとしている。
宿泊料金の相場というものを立夏は知らないが、なんだか高そうだと思う。
草灯と一緒に行動するとたいていは草灯が支払いをする。
今日はクリスマス・デートをプレゼントに欲しい、という草灯のリクエストだった。
草灯へのクリスマスプレゼントは、実はちゃんと用意してある。
大きさがあるので今日は持ち歩くと邪魔になってしまうから、家に置いて来た。
明日は草灯の家で奈津生と瑶二、キオと5人でパーティーをするという話なので、一度家に帰ってから明日渡す予定だ。
(プレゼント、喜んでくれるかな…)
草灯に何をあげたらいいかわからなくて、考え抜いたプレゼントだ。
気に入ってくれるといいなと立夏は考える。

草灯がバスルームからバスローブ姿で出て来る。
「立夏」
窓際に置かれている椅子に座って窓枠に腕を乗せて外を眺めていた立夏は、呼ばれて振り返る。
「わすれもの」
そう言って草灯は先日、立夏の誕生日に渡した指輪を鎖に通したペンダントを掲げて見せる。
「あ、ゴメン(忘れてた!)」
シャワーを浴びる時に外して洗面台に置きっぱなしだったそれを、立夏は手を出して受け取ろうとする。
が、草灯は何を思ったか指輪から鎖を抜き取ると、それを差し出された立夏の左手の指にはめる。
「………」
指輪は左手の人差し指にはめられた。

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