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奈津生と瑶二が出て行ってしばらくすると、ドアが控えめにノックされて草灯はドアを開ける。
ドアを開けたそこには、ハロウィンを意識して白いシャツに襟元にリボンを結び、黒のホットパンツとジャケットを着ている立夏がいた。
足元は黒と白のボーダーのニーソックスで、ジャケットには黒いコウモリの翼がついている。
どうやら悪魔をイメージした仮装らしく、可愛らしい悪魔を草灯は部屋の中へ招き入れる。

立夏の家のあたりではハロウィンに協力している家は家のドアにリボンを結んであって、訪ねるとお菓子をくれるのだという。
立夏も知らなかったのだが、ユイコが教えてくれて今日は仮装をしてお菓子をもらいに回るのだそうで、立夏も参加するつもりだと草灯は聞いていた。
それなら、と草灯は立夏に来るようにと呼び寄せておいたのだ。

「かわいいね、その仮装」
「一応、悪魔のつもりなんだけど」
仮装なんて用意出来ないと思っていたが、ユイコが提案してくれて服はあるもので済ませて、黒い布をコウモリの羽根の形に縫い、綿を入れてユイコが作ってくれたのだ。
「こんな可愛い悪魔なら大歓迎だな」
にっこりと笑う草灯に立夏は照れて頬を染めてる。
椅子に座った立夏は来る途中に貰って来たお菓子が入った袋を床に置き、期待した瞳を草灯に向けて聞く。
「お菓子は?」
「ないよ」
「ないの…?(なんで?呼んだのにくれるんじゃなかったのか)」
ショボンとしてミミを下げる立夏は見るからにがっかりした様子だ。
「じゃあ、いたずら…」
「どうぞ」
にこっと笑う草灯に立夏は眉を寄せる。
「どうぞって…」
「どんなイタズラしてくれるの?」
「え?…と……(考えてなかった)」
お菓子をくれるものだとばかり思ってたので、イタズラなんて何をするのか考えてなかった立夏は、困った顔をする。
だいたい、イタズラを「どうぞ」などと言うなんて思いもしなかった。
悪戯って普通はどんなことをするんだろう?と立夏は悩む。
「おいでなんて言うから、お菓子くれるのかと思ってた」
なんとなく、甘い匂いがすることに気づきながら、本当にお菓子がないのかと思って立夏が言う。
「悪戯しないの?」
テーブルに頬杖をついて立夏の頬を撫でながら草灯が言うと、立夏は困った表情で言う。
「だって悪戯なんて考えてなかったし…」
「立夏の悪戯、何してくれるのか楽しみにしてたのになぁ」
クスクス笑って草灯が言うと、立夏はむっとした顔をする。
「ごめんね、本当はちゃんと用意してあるよ。奈津生と瑶二が帰って来たら食べよう」
お菓子を用意してあると言うと、立夏は嘘を言ったことを怒らず、楽しみだと言ってしっぽを振る。

立夏がどういう反応をするか見たくて、わざとお菓子は用意していないと意地悪をしてみたのだが、がっかりしたり困った顔も可愛かった。

それから帰宅した奈津生と瑶二と一緒に、立夏は草灯の手作りのカボチャのプリンを食べた。
ハロウィンなんて仮装もお菓子を貰って回るのも、立夏は初めてだったけれど、記念の写真も撮れたので楽しい思い出になった。

〜END〜

ハロウィンには少し早いですが、楽しんでもらえたでしょうか?
実はハロウィン話というのは初めて書きました
草灯は立夏が困ったりがっかりするのが見たくて意地悪したかっただけだけど、悪戯してもらうのも期待してたと思う
立夏は悪戯なんてあまりしたことないっぽいなー
2006.10.18 UP

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