KEY
暗い夜道を草灯に家まで送ってもらい、家の前に着いた別れ間際──。

「立夏、これあげる」
ごそっとポケットからなにか取り出し、草灯は握った手を差し出してくる。
「誕生日プレゼント。
ちゃんとしたものは別にあげるけど」
「いいよ、別に」
そう言って首を振って笑う立夏の手をとって、草灯は立夏の小さな手のひらに握っていたものを乗せる。

「鍵…?」

誕生日プレゼントと言って手のひらに置かれたのは一本の鍵だ。
どこの、何の鍵なのか立夏はじっとその鍵を見つめる。
「オレの家の鍵。
いつでもおいで。立夏が来たい時に。オレが留守中でも開けて、入ってていいよ。寒いから外で待たなくてもいいように、ね」
コートのポケットに両手を入れて話す柔らかい笑みを浮かべて話す草灯を、立夏は黙って見上げる。

立夏のことだから、「待たねぇよ」という返事が来るかなと思っていたが、予想した反応と少し違うようだ。

「立夏ならいつでも歓迎するよ」
草灯はにこっと笑って片手をコートのポケットから出して頭を撫で、顔の輪郭を撫でるとそっと立夏の方から、珍しく抱きついてくる。
「…サンキュ。失くさないようにする」
言いながら立夏はぎゅっと貰った鍵を握り締めた。
「もし失くしたらまたあげるよ」
クスクス笑いながら草灯は立夏の手触りのいいミミを優しく撫でた。

顔に冷たいものを感じて立夏は空を見上げる。
はらはらと雪が舞い落ちて来るのを立夏は白い息を吐き出しながら見上げる。
「雪だ」
「どうりで冷えるはずだ」
「でもきれいだな…」
少しの間、二人で雪を見る。
「立夏、寒いから」
「あ、ごめん。草灯、これから帰るんだもんな」
もう帰るように草灯が促すと、立夏は勘違いしたようで草灯はそうじゃないんだけど、と笑う。
「寒いし気を付けて帰れよ?」
「ありがとう」
じゃあ、と言って立夏は家へ帰る。
家に帰った立夏の部屋の明かりがつくと、窓を開けて立夏が手を振って来て、笑みを浮かべて手を振り返すと草灯は自宅への帰路についた。

草灯が帰るのを見て立夏は窓とカーテンを閉じ、着替えてから貰った鍵を自宅の鍵と一緒にキーホルダーにつけて、バッグに入れた。

草灯がくれた鍵は立夏が草灯と知り合ってから、窓の鍵をあまり掛けなくなった意味と同じかも知れない。

鍵はそこへ入れる者が持つもの。
それを許された『しるし』だと思う。
なにかを許され、認められ、特別になれたような気がする。
そう思うと嬉しかった。

〜END〜

甘々ですなー
通いの幼な妻、なんて言ってみたりして…あっはー
ホンモノの二人ではこんなことはありえない…んだろうなぁ!ちぇっ
草灯は立夏の家の鍵持ってましたけどね!(爆笑)
この話は21日の日記で書いて移したものです
少し加筆しています☆
2004.12.23 UP


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