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頑固というか強情というか、譲らない立夏に草灯は苦笑する。
もう少し甘えてくれてもいいのにと思う。
立夏のためならどんなことでもしてあげるのに。
このくらいのことはさせて欲しい。

「じゃあ今日はデートってことで」
「は!?デート?(何言ってんの!?)」
「デートしてくれるお礼で、払わせて?」
「いや…それは……っていうか、解決にならないし…って、おい!」
立夏が反論してる間にも草灯は手を握ってくる。
こういうところは草灯は強引だと思う。
「デートなんだからいいでしょ」
「まだいいとは言ってないだろ!(勝手に決めるなっ)」
「立夏は強情だね。とにかく、オレはお金は受け取らないよ。どうしても払うっていうなら…」
「なんだよ…?」
「キスして。今すぐ」
「はァ!?い、今って、ここで!?」
思わず大きな声をあげる立夏に、草灯はしっかりと手を握ったままにこにこと笑う。
「そう。ここで。ちゃんと口に、10秒以上じゃなきゃダメだよ」
「なっ…ずるい…!」
「知らなかった?」
くすくす笑う草灯に立夏は、こんな人通りの多い場所でそんなこと出来るかと睨む。
キスしなければ受け取らないとか、ずるいと思う。
出来ないとわかっていて言っているのだ。
反論させない、断らせないように。
「デートの方がいいでしょ?」
「……わかったよ…」
ミミを伏せて立夏は渋々承諾する。

強がったり意地っぱりだったりしても、立夏はまだ子供だ。
映画に夢中になって、ミミを伏せたり震わせたりせわしなく動かし、スクリーンに釘づけになっている。
映画より立夏の反応の方が興味深くて、草灯は隣に座る立夏を横目で盗み見る。
ストーリーに夢中になるあまりに、ポップコーンをつまんだまま、ぽかんと口を開けている立夏に、ついくすくす笑ってしまう。
「……?」
笑うシーンではないのにくすくすと笑う草灯を、立夏は怪訝な表情で見上げる。
「ポップコーン、落とすよ」
「っ…わ…」
耳元で話し掛けると立夏はびくっとして手にしていたポップコーンを落としそうになる。
「だから言ったのに」
ヒソヒソと話す草灯に立夏は耳を手で押さえる。
顔が熱い。たぶん赤くなってる。
暗い映画館で顔色まではわからないだろうから、助かった。

草灯に耳元で喋られると背筋がぞくりとする。
その低い声で耳元で喋られると、くすぐったくてどきどきしてしまう。
一度意識してしまうともうダメで…。
さっきの書店や今みたいに周りに迷惑にならないように、ヒソヒソと耳元で喋るのはわかるのだが、立夏にとってはかなり心臓に悪い。
並んで歩いている時は草灯は背が高いから、そんなこともないのだけれど。
背が低くて身長差があることでひとついいことがある。
耳元でその声を聞くことは身長差があるから、そう頻繁ではない。
そういつもだと、心臓がもたないと思う。
頭上から降ってくる声を聞く分にはいいのだけれど。

隣に座る草灯に気付かれないように、立夏は小さく息をついて胸を手で押さえる。

だから──。
お願いだから。
「好きだよ」なんて言わないで。

(あーあ…重症かも……)
その声で死にそうになるくらいどきどきしてしまうなんて、草灯には絶対に気付かれたくないし言えない。

〜END〜

ドラマCD記念です(笑)
わかっちゃいましたが、実際声にして聞くと草灯のセリフは犯罪ですねえ
スリープレス戦で立夏は「草灯の声が気持ちいい」といってましたね
立夏が乙女ちっくでスイマセン…
裏バージョンもやりたいです(笑)
2005.1.30 UP

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